鶏・豚・牛  やきとり分布  やきとり語源  やきとり好きな県

「やきとり」の定義はむずかしい。

 全国やきとり連絡協議会の会員地域の「やきとり」をみると、北海道室蘭市や埼玉県東松山市は豚肉、福岡県久留米市は馬肉だ。愛媛県今治市になると、鶏肉はつかうものの、串に刺さないものとなり、同じ「やきとり」といっても、その素材や形状は多岐にわたる。
 いっそ、開き直ってやきとり屋にあるメニューすべてが「やきとり」だと設定すれば定義は簡単になるが、この裁定は乱暴すぎる。ラーメン屋の品書きに含まれるからといって「チャーハン」もラーメンに含まれると規定するようなものだからだ。

 困った時の本頼み。事典、辞書で手当りしだいに「やきとり」を調べてみた。

 調査した事典、辞書の類を発行年順に記すと『大辭典』(平凡社)、『標準国語辞典』(旺文社)、『日本国語大事典』(小学館)、『新明解国語辞典』(三省堂)、『現代国語辞典』(日本文芸社)、『講談社国語辞典』(講談社)、『世界大百科事典』(平凡社)、『広辞苑』(岩波書店)、『三省堂国語辞典』(三省堂)、『新選国語辞典』(小学館)、『大辞泉』(小学館)、『集英社国語辞典』(集英社)、『岩波国語辞典』(岩波書店)、『学研現代新国語辞典』(学習研究社)、『デスク版現代実用辞典』(講談社)、『大辞林』(三省堂)、『デイリーコンサイス国語辞典』(三省堂)、『日本語大辞典』(講談社)、『料理食材大事典』(主婦の友社)、『新世紀ビジュアル大辞典』(学習研究社)の20册である。

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 「やきとり」の説明は、「素材」「調理方法」「形状」に大きく分類される。

分類

とり

20

100

(鳥)

14

70

(鶏)

5

25

(とり)

1

5

小鳥

3

15

14

70

11

55

もつ

8

40

臓物/内臓

11

55

野菜

1

5

●素材

 鶏、鳥、とりという表現はさておき、「とり」肉を使うのは名前から当然のことではあるが、牛や豚の臓物に言及したものが多い。
 「やきとり」という名前なのに、なぜ牛や豚を含むかということについては、「やきとりの歴史」の項で詳しく述べるので、乞うご期待の程。
 かいつまんでいえば、江戸時代以前からの「やきとり」と近代になってからの「やきとり」は全く違うものなのである。江戸期の「やきとり」は小鳥を中心としたものだが、肉食が許されて、焼いた鳥・牛・豚の臓物を庶民が食べるようになったのが近代以降の「やきとり」だ。
 今まで余り食べることのなかった内臓を焼いて食べやすくした料理が、江戸時代の小鳥を焼いた料理との関連から「やきとり」を名のった。この料理が市民権を得るようになるのは、太平洋戦争が終ってからのことである。
 「やきとり」の出自から、「とり」という言葉があっても、牛や豚の内臓が含まれていることに何の不思議もないことになる。久留米の「やきとり」メニューにある馬の内臓も歴史的必然だともいえるのではないか。
 「やきとり」の素材は「
鳥肉や鳥・牛・豚などの内臓」と定義したい。

分類

焼く

20

100

炙る

10

50

直火

2

10

素焼き

1

5

たれ

9

45

8

40

つけ焼

2

10

●調理方法

 「やきとり」だけに「焼く」ことは欠かせない。愛媛県では揚げた鶏肉を「やきとり」と称する四国中央市の一部地域があるが、これは店主がそう命名しただけのこと。かつて、デザイナーやコピーライターなどのカタカナ商売は、名刺にそう書けば職業になると断じた人がいたことを思い出した。とにかく、「やきとり」は焼いてなければいけない。また、今治市の「せんざんき」や北海道の「ざんぎ」など、鶏肉を揚げたものがある。「やきとり」メニューではあるが、「やきとり」ではないと断言する。愛知県名古屋市の「手羽ピリ辛揚げ」も捨てがたいが、「やきとり」そのものではない。
 半数の辞書が「炙る」ことに言及しているが、愛媛県今治市や宮崎県、広島県、大阪府などの一部に「鉄板で焼」いた「やきとり」がみられることから、「炙る」「直火」とのみ限定することは避けたいものだ。
 「たれ」「塩」での味つけに依存はない。ただ、調味料は北海道室蘭市の「練り辛子」や埼玉県東松山市の「辛味の味噌だれ」などの特異なものもある。
 「やきとり」の調理方法は「
焼いて、塩やたれなどをつける」と定義したい。

分類

14

70

小片/小切り

3

15

小さく

1

25

細かく

1

5

切る

4

20

一口大

1

5

小鳥・野鳥の場合
骨つき肉

1

5

丸のまま

1

5

●形状

 串に刺さっていることに言及した辞書が70%。串に刺さっていれば、すべて「やきとり」と断じたいが、香川県の「骨つき鳥」や宮崎県の「もも焼き」などのメニューがある。これらは鶏のもも肉をオーブンや炭で焼いたものだ。大きくて骨をつかんで食べるためか、串は用いられない。また、鉄板焼鶏の地域では串を使わない「やきとり」もある。
 串を使うのは素材を焼きやすくするための工夫だ。「田楽」など、日本料理の焼き物には串を使うものが多い。では「串焼き」と「やきとり」の違いは何だろうか。
 上記の辞書・事典に掲載された「串焼き」を調査した。

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 「串焼き」はその名の通り、素材を「串に刺して焼く」ことだが、素材は「やきとり」と異なる。「やきとり」は「鳥肉や鳥・牛・豚などの内臓」だが、「串焼き」は「魚・貝・肉・野菜」とメニューの種類が大きく拡がる。「やきとり」を商う店のなかには「ししゃも」や「いか」「えび」「ほたて」などの魚介類メニューを扱っているところもあるが、これが「やきとり」とは断じにくい。魚介類は「串焼き」であって、「やきとり」の範疇に入らないと考えるのが妥当だと思う。「やきとり」メニューには、串で刺されているものが多いが、串に刺さっていれば「やきとり」ではない。
 「やきとり」の形状は「
串に刺されたものも多い」と定義したい。

以上を勘案してこのように定義する。

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