やきとりの定義  やきとり分布  やきとり語源  やきとり好きな県

 「やきとり」に使われる鶏、牛、豚が、地域によりなぜ違うのかを食肉文化の側面からたどってみよう。
 元禄10年(1697)、江戸の医師・人見必大の手で出版された『本朝食鑑』によれば、「大抵参州(=愛知)・遠州(=静岡)以東から奥州(=東北)・夷(えぞ=北海道)にかけては、馬が多く牛は少ない。それで、耕耘運転には皆馬を用いる。尾州(=愛知)・濃州(=岐阜)以西より海辺の国にかけては、牛が多く馬は少ない。それで、耕耘運転には皆牛を用いる。就中(なかんづく)、播州(=兵庫)・備州(=岡山)は最も牛を産出するところで、盛んに蕃息(はんしょく)する」とある。
 この記述によれば、300年以上も昔から東日本では馬、西日本では牛が中心に飼われていたことになる。明治となり、欧米文化の影響を受けて肉食が盛んになると、こうした差異が肉の好みに大きく影響を与え、地域差が生じたと考えられる。

牛・豚・鶏の消費金額・消費量比較

順位

金額

金額

金額

1

和歌山

和歌山

山梨

青森

福岡

福岡

2

京都

滋賀

新潟

静岡

鹿児島

大分

3

兵庫

兵庫

静岡

秋田

京都

鹿児島

4

三重

福岡

奈良

新潟

滋賀

宮崎

5

滋賀

山口

神奈川

北海道

奈良

滋賀

6

福岡

奈良

兵庫

沖縄

兵庫

和歌山

7

奈良

京都

宮城

宮城

大分

山口

8

大阪

大阪

福島

福島

和歌山

熊本

9

広島

熊本

千葉

千葉

大阪

奈良

10

香川

広島

青森

長野

宮崎

長崎

岐阜県以東

岐阜県以西

九州・沖縄

※平成15年「家計調査年報」(総務省統計局)より

 総務省統計局による平成15年「家計調査年報」から牛肉、豚肉、鶏肉の消費金額、消費量のトップ10を記してみる。
 また、牛肉、豚肉、鶏肉のうち、消費金額、消費量の多いものを日本地図に示してみた。

全国における肉の消費の詳しい資料はこちら

 これらを分析すると、天下を二分した関ヶ原のあった岐阜県を境として、以東は豚肉消費圏となり、以西は牛肉消費圏となる。また、鶏肉がよく消費される地域は九州(沖縄を除く)と山口県ということがわかる。
 農耕用に飼われていた家畜に、西日本では牛が多いことから、農耕作業に使えなくなった老牛を食料にすることが容易だったと考えられる。馬を飼っていた東日本では馬肉を食べる文化が主流にならず、明治時代に英国から輸入された豚の飼育が急速に東日本に拡がったため、豚肉消費圏となったのではないか。
 九州で鶏肉の消費が多いのは、古くから外国との交流があり、水炊き、筑前煮などの食文化もあったことが影響している。沖縄が鶏肉ではなく豚肉消費圏なのは、豚肉中心である中国の食文化の影響を大きく受けたためで、もともと鶏肉中心だった鹿児島もその影響をかぶったようである。

 こうした食肉の嗜好の差異は、内臓肉を使う「やきとり」に大きく影響を与えた。内臓を供給できる屠殺場や解体場の存在が必要で、しかも鮮度が要求された。牛肉消費圏の大阪では、内臓を焼いたものを「モツ焼き」と呼び、のち、「ホルモン焼き」と呼び名を代えて「焼肉」となった。東京では、豚の内臓を使った串が「焼鳥」となり、「焼きとん」と呼ばれた時代もあったが、「やきとり」へと名称が統一されている。

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